2025年10月21日、高市早苗氏が日本の第104代内閣総理大臣に指名され、憲政史上初の女性首相が誕生した。自民党と日本維新の会による連立政権のもと、積極財政を掲げる高市政権への期待から、株式市場は史上最高値を更新し、円は一時153円台まで下落するなど、金融市場に大きな波紋を広げている。

30秒要約:いま何が起きているのか
- 高市早苗氏が第104代首相に就任:10月21日、衆参両院で首相指名選挙が行われ、高市氏が日本初の女性首相となった[1][2]
- 株価は史上最高値を更新:日経平均株価は10月9日に48,000円台を初突破、20日には49,185円まで上昇。「高市トレード」と呼ばれる市場現象が発生[1][5]
- 円安が加速、153円台に:金融緩和継続への期待から円安が進行し、10月8日には1ドル=153円台まで下落。輸入物価上昇への懸念も[1][17]
3分解説:なぜこれが重要なのか
■ 70年の自民党史で初の女性総裁
10月4日に実施された自民党総裁選の決選投票で、高市早苗氏は小泉進次郎氏を185票対156票で破り、自民党第29代総裁に選出された。立党70年の歴史で初めて女性が党のトップに立ち、10月21日の臨時国会で第104代首相に指名された。これは日本の憲政史上初の女性首相の誕生であり、G7諸国では英国、カナダ、ドイツ、イタリアに続く5番目の女性政権トップとなる[1][9]。
高市氏は1961年生まれの64歳。奈良県出身で神戸大学経営学部を卒業後、松下政経塾を経て、1993年に衆議院議員に初当選。これまで総務大臣を5回務め、史上最長の在職期間を記録している。経済安全保障担当大臣などの要職も歴任した[10]。
■ 自民・維新連立で政権基盤を確保
高市氏は10月20日、日本維新の会の吉村洋文代表と会談し、連立政権合意書に署名した。維新は閣僚を出さず国会運営などで協力する「閣外協力」の形をとる。長年続いた自民・公明連立が解消され、新たな枠組みでの政権運営となる[1][2][8]。
連立合意には12項目の政策が盛り込まれ、衆議院議員定数を1割削減する目標や、維新が掲げる「副首都構想」の実現に向けた協議体設置などが含まれている[8]。
■ 「高市トレード」が金融市場を席巻
高市氏の総裁就任を受けて、金融市場では「高市トレード」と呼ばれる現象が発生した。これは円安・株高・債券安(長期金利上昇)が同時に進む動きを指す。10月6日には日経平均株価が一時2,300円超上昇し、初めて48,000円台に到達。10月9日には終値で48,580円を記録し、さらに10月20日には49,185円まで上昇した[1][3][5]。

一方、為替市場では10月1日の1ドル=148円から、10月8日には153円台まで円安が進行。高市氏が積極財政と金融緩和の継続を示唆したことで、日銀の利上げ観測が後退し、円売りが加速した[3][5][17]。
市場関係者の間では、10月29〜30日に予定されている日銀の金融政策決定会合での利上げ確率が、総裁選前の70%から20%程度まで低下。高市政権の誕生により、金融緩和が長期化するとの見方が強まっている[6][13]。
10分深掘り:何が起き、これからどうなるのか
■ 時系列:総裁選から首相指名まで
| 日付 | 出来事 | 市場への影響 |
| 10月4日 | 自民党総裁選、高市氏が決選投票で勝利(185-156票) | 日経平均+1.2%、ドル円149円台 |
| 10月6日 | 週明け、「高市トレード」本格化 | 日経平均+2,175円(+4.8%)、48,000円台到達 |
| 10月8日 | 円安が加速 | ドル円が153円台に |
| 10月9日 | 株価、終値で初の48,000円超え | 日経平均48,580円 |
| 10月20日 | 自民・維新が連立合意 | 日経平均49,185円(史上最高値更新) |
| 10月21日 | 臨時国会で高市氏が第104代首相に指名 | − |
| 10月29〜30日 | 日銀金融政策決定会合(予定) | 利上げ見送りの可能性90% |

■ 高市政権の経済政策:「責任ある積極財政」の中身
高市氏が掲げる経済政策の柱は「責任ある積極財政」と「ワイズスペンディング(賢い支出)」だ。10月21日の初閣議では物価高対策を最優先課題として指示した[1]。
具体的な政策内容は以下の通りである:
- 中小企業支援の強化:現行の賃上げ促進税制は税額控除のため赤字法人には恩恵がないという問題があり、高市氏は赤字法人にも手当てする方針を表明。助成金などの直接支援策を示唆している[11]。
- 燃料価格対策:ガソリン税と軽油引取税の暫定税率を廃止する方針。これによりガソリン税で約1兆円、軽油引取税で約5,000億円の減収となる見込み[18]。
- 医療・介護分野の支援:診療報酬と介護報酬の前倒し改定に意欲を示し、補正予算を使った支援を検討[1]。
- 財政健全化とのバランス:政府の純債務残高対GDP比を引き下げることに「心を砕く」と述べ、国土強靱化やエネルギー、農業、医療への官民投資で需要を創出し、税収増を目指す考えを示した[12]。
また金融政策については、「財政政策も金融政策も責任を持つのは政府である」と指摘し、日銀と密にコミュニケーションをとると述べて日銀を一定程度けん制した[1]。
■ 閣僚人事:保守色強い布陣と初入閣10人
10月21日に発足した高市内閣では、主要閣僚に以下の人物が起用された:
- 官房長官:木原稔(56歳)
- 外務大臣:茂木敏充(70歳)
- 財務大臣:片山さつき(66歳、女性)
- 防衛大臣:小泉進次郎(44歳、総裁選で敗れた対立候補を起用)
- 総務大臣:林芳正(64歳)
- 経済産業大臣:赤沢亮正(60歳)
- 経済安全保障担当大臣:小野田紀美(42歳、女性)

内閣には初入閣が10人含まれ、女性閣僚は高市首相を含めて4人(片山さつき財務相、小野田紀美経済安全保障相など)。年齢構成は40代が2人、50代が4人、60代が10人、70代が2人となっており、経験豊富な60代を中心とした布陣となった[9]。
対立候補だった小泉進次郎氏を防衛大臣に起用したことで、挙党体制の構築を図る姿勢を示した。一方、維新との連立合意により閣外協力となったため、維新からの閣僚は含まれていない[1]。
■ 市場の評価と懸念:「高市トレード」の持続性
肯定的な見方:
野村證券のアナリストは、「サナエノミクス相場」が続く可能性を指摘。積極財政への期待と日銀の利上げペース鈍化が株価を押し上げると分析している。また三井住友DSアセットマネジメントは、日経平均が47,000円から50,000円のレンジで推移する可能性を示唆した[14][13]。
懸念される点:
- 円安による物価上昇:1ドル=150円を超える円安は、輸入物価を押し上げ、家計や企業の負担増につながる。特に原油や食料品など輸入依存度の高い品目で価格上昇が懸念される。財務省幹部は「150円を超える円安はやや行き過ぎ」との見方を示した[15][16]。
- 財政規律の緩み:日本経済新聞は「アベノミクスの呪縛」と題し、積極財政が物価高を助長するリスクを指摘。国債残高が積み上がる中での大規模な財政出動は、長期的な財政健全化を遠のかせる可能性がある[1]。
- 日銀との関係:高市氏は「政府が金融政策にも責任を持つ」と発言し、日銀の独立性に配慮を欠くとの批判も。日銀の高田はじめ審議委員は10月20日、「2%の物価目標はおおむね達成した局面」として利上げの必要性を示唆しており、政府と日銀の温度差が浮き彫りになっている[3][6]。
- 政治的な不確実性:Bloomberg調査によれば、回答者の72%が「日本の不安定な政治情勢が10月の利上げ可能性を減少させた」と答えており、政局の流動性が市場の不確実性を高めている[6]。
■ 国際比較:世界の女性首相たちとの違い
高市氏の首相就任について、海外メディアは英国のマーガレット・サッチャー首相やドイツのアンゲラ・メルケル首相との比較を行っている[1][25]。




- マーガレット・サッチャー(英国、在任1979-1990年):「鉄の女」として知られ、11.5年にわたり首相を務めた。保守的な経済政策と強硬な外交姿勢が特徴[19]。
- アンゲラ・メルケル(ドイツ、在任2005-2021年):16年間首相を務め、「鉄のお嬢さん」と呼ばれた。科学者出身で、「冷静な頭脳と温かい心」のリーダーシップを発揮[20]。
- ジャシンダ・アーダーン(ニュージーランド、在任2017-2023年):37歳で首相就任。愛、優しさ、共感を重視するリベラルなリーダーシップが特徴[21]。
高市氏はサッチャー同様の保守派として知られるが、選択的夫婦別姓制度に反対するなど、ジェンダー平等政策では慎重な立場をとる。このため「女性首相だからといって女性に優しい政治になるとは限らない」との声も出ている[3][25]。
また、高市氏の夫である山本拓・元衆議院議員(73歳)は、日本初の「ファーストジェントルマン」となった。山本氏は「ステルス旦那」として目立たずに支える方針を表明し、外遊には同行しないとしている[1][22]。
■ 今後の見通し:日銀会合と年末に向けた課題
10月29〜30日に開催される日銀の金融政策決定会合が、当面の最大の注目点となる。Bloombergの調査では、回答者の90%が政策維持を予想し、利上げは12月(確率50%)か2026年1月(確率80%)まで先送りされるとの見方が優勢だ[6]。
ただし、日銀の高田はじめ審議委員と田村直樹審議委員は9月の会合で0.5%の政策金利維持に反対票を投じており、今月の会合でも0.75%への利上げを主張する可能性がある[6]。
高市政権が直面する課題は多岐にわたる:
- 物価高対策と経済成長の両立:円安による輸入物価上昇を抑えつつ、賃金上昇を伴う経済成長を実現できるか
- 財政健全化への道筋:積極財政を掲げながら、純債務残高対GDP比をどう引き下げていくのか
- 日銀との関係調整:政府の意向と日銀の独立性のバランスをどう取るか
- 維新との連立維持:政策の違いを抱える維新との関係をどう安定させるか
- 国際社会での存在感:女性首相として、また保守派の首相として、G7などでどのような外交を展開するか
市場関係者の間では、「高市トレード」が一時的なものか、それとも政権の経済政策が実際に効果を上げて持続的な株高・成長につながるのか、見極めが続いている。野村證券のアナリストは「目先は高市政権の円安許容度を試す展開になる」と指摘しており、為替介入の可能性も含めて、政府の対応が注目される[15]。
主要出典一覧
以下の出典は信頼できる報道機関・研究機関から収集した情報です。各リンクをクリックすると該当メディアの公式サイトまたは関連ページに移動します。
- 日本経済新聞「自民党総裁に高市早苗氏 15日にも首相指名、史上初の女性」他、高市政権関連報道(2025年10月)
- 時事通信「高市内閣が発足 初の女性首相、経済対策指示」(2025年10月21日)
- Bloomberg「高市氏が初の女性首相へ、自・維連立で新体制も課題山積」(2025年10月20日)
- 日本経済新聞「日経平均株価、初の4万8000円台突入」(2025年10月)
- Bloomberg「円安・株式先物急伸、『高市トレード』再燃」(2025年10月5日)
- Bloomberg「日銀10月会合は9割が政策維持を予想、12月利上げ5割に拡大」(2025年10月23日)
- 自民党広報 公式X(旧Twitter)「決選投票の結果発表」(2025年10月4日)
- 日本経済新聞「自民党と日本維新の会、連立政権合意書の全文」(2025年10月20日)
- nippon.com「高市早苗内閣の顔ぶれ:初入閣10人、女性起用2人」(2025年10月)
- 高市早苗公式サイト「プロフィール」
- 第一生命経済研究所「高市新総裁の経済政策」(2025年10月)
- SOMPOインスティチュート・プラス「高市新総裁の経済政策」(2025年10月)
- 三井住友DSアセットマネジメント「自民党総裁選は高市早苗氏が勝利~国内金融市場への影響を考える」(2025年10月)
- 野村證券「高市新総裁誕生で日経平均株価一時48,000円台突破」(2025年10月)
- 野村證券「ドル円見通しを円安方向に修正」(2025年10月)
- オリックス銀行「円安はいつまで続く?今後の見通し」(2025年10月)
- 外為どっとコム「ドル円、151円が視野に」(2025年10月7日)
- 税理士.ch「高市早苗・自民党新総裁が掲げる経済対策をわかりやすく紹介」(2025年)
- 内閣府男女共同参画局「諸外国における女性の政治参画」平成19年版男女共同参画白書
- 日経ビジネス「『鉄の女』を超えたメルケル独首相」
- コスモポリタン「今注目したい、5人の『現職』世界の女性リーダーたち」
- 福井新聞「高市早苗首相の夫『健康を度外視しないようチェック』」(2025年10月)
- 東京新聞「『高市トレード』って何?」(2025年10月)
- 野村證券・池田雄之輔「高市新総裁誕生で日経平均株価一時48,000円台突破『サナエノミクス相場』は続くか」(2025年)
- 東洋経済オンライン「日本政治史に刻んだ新たな1ページ、初の女性首相を読み解くための5つの視点」(2025年10月)
※本記事の情報は2025年10月24日14:00時点のものです。数値・事実関係は上記出典に基づいています。
キーワード:高市早苗、女性首相、高市トレード、円安、日本政治、経済政策、株式市場、日銀、自民党、維新の会
【画像について】
本記事には以下の画像が使用されています:
①高市早苗首相の就任写真(出典:首相官邸)
②日経平均株価の急騰チャート(出典:三井住友DSアセットマネジメント)
③株価と為替の同時推移グラフ(出典:野村證券)
④高市内閣の閣僚集合写真(出典:ロイター/nippon.com)
⑤世界の女性首相ギャラリー(出典:Wikimedia Commons / 首相官邸)
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