「補助金」と「助成金」。この2つ、名前は似ていますが、実は中身がけっこう違います。
「うちの会社でも使えるお金があるらしい」と聞いて調べ始めたものの、どっちがどっちか分からなくなった…という経営者の方は多いのではないでしょうか。
この記事では、補助金と助成金の違いを「どこがやってるの?」「審査はあるの?」「いつお金がもらえるの?」といった素朴な疑問に答える形で整理していきます。

そもそも「補助金」と「助成金」って何が違うの?
まず結論から言うと、一番大きな違いは「どこの省庁が管轄しているか」です。
| 項目 | 補助金 | 助成金 |
|---|---|---|
| 管轄 | 経済産業省・中小企業庁など | 厚生労働省 |
| 目的 | 事業の成長・設備投資 | 雇用の安定・労働環境の改善 |
| 財源 | 税金(国・地方自治体の予算) | 雇用保険料 |
| 審査 | 競争型(選ばれる必要あり) | 条件達成型(要件を満たせばOK) |
| 金額 | 数十万円〜数億円 | 数十万円〜数百万円 |
| 募集期間 | 限定的(1週間〜1ヶ月程度) | 通年で受付 |
補助金は「審査に通らないともらえない」
補助金は、経済産業省や中小企業庁が実施している「公募型」の支援制度です。申請しても、審査を通過しないとお金はもらえません。
たとえば「ものづくり補助金」の場合、申請者が提出した事業計画書を審査員が読んで点数をつけます。点数が高い順に採択されるので、良い事業計画を書かないと選ばれない仕組みです。
助成金は「条件を満たせば基本的にもらえる」
一方、助成金は厚生労働省が管轄しており、「条件達成型」の制度です。決められた要件(たとえば「非正規社員を正社員にする」など)を満たせば、原則としてお金がもらえます。
競争ではないので、「頑張って書類を作ったのに落ちた…」ということは基本的にありません。ただし、事業を始める前に計画書を提出しておく必要がある点には注意が必要です。

2025年〜2026年に使える主な補助金
では、具体的にどんな制度があるのか見ていきましょう。まずは補助金から。
1. ものづくり補助金
正式名称は「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」。中小企業が新しい製品やサービスを開発するときの設備投資などを支援してくれます。
- 補助上限:750万円〜1,250万円(従業員数による)
- 補助率:1/2〜2/3
- 主な支援枠:「製品・サービス高付加価値化枠」「グローバル枠」
2025年度は、最低賃金の引き上げに取り組む事業者向けに補助率がアップする仕組みが新設されています。

2. IT導入補助金
会計ソフトや勤怠管理システム、ECサイト構築など、ITツールの導入費用を支援してくれる制度です。
- 補助上限:最大450万円(通常枠の場合)
- 補助率:1/2〜2/3
- 対象:ソフトウェア、導入サポート費用、保守費用など
2025年度は、保守サポート費やマニュアル作成費用も補助対象に追加されています。
詳細:IT導入補助金2025
3. 小規模事業者持続化補助金
従業員20人以下(商業・サービス業は5人以下)の小さな会社やお店が対象。販路開拓のための広告費やホームページ制作費などに使えます。
- 補助上限:50万円〜200万円
- 補助率:2/3
- 支援枠:通常枠、創業型、共同・協業型など
4. 中小企業省力化投資補助金
人手不足対策として、省力化につながる設備(ロボットや自動化機器など)の導入を支援する制度です。
- 補助上限:最大1億円
- 補助率:1/2〜2/3
- 申請方式:カタログ注文型(登録された製品から選ぶ)
詳細:中小企業省力化投資補助金
5. 中小企業新事業進出補助金【2025年新設】
2024年まで実施されていた「事業再構築補助金」の後継にあたる制度。新しい事業分野への進出を目指す中小企業を支援します。
- 対象:新事業分野への進出を目指す中小企業
- 補助対象:設備投資、外部専門家の活用など
6. 中小企業成長加速化補助金【2025年新設】
売上高100億円を目指す成長志向型の中小企業向け。工場の新設やソフトウェア導入など、大胆な設備投資に使えます。
- 補助上限:5億円
- 補助率:1/2
- 基本要件:投資額1億円以上、「売上高100億円を目指す宣言」の実施、賃上げ要件の充足

2025年〜2026年に使える主な助成金
次は厚生労働省が管轄する助成金です。
1. キャリアアップ助成金
パートや契約社員などの非正規雇用の人を正社員にしたり、待遇を改善したりした会社に支給される助成金です。

主なコース:
- 正社員化コース:有期契約の従業員を正社員にした場合に支給
- 賃金規定等改定コース:非正規社員の基本給を3%以上アップした場合に支給
- 賞与・退職金制度導入コース:非正規社員向けに賞与や退職金制度を新設した場合に支給
2025年の改正で、申請前にキャリアアップ計画書の「認定」を受ける必要がなくなり、「届出」だけで済むようになりました。手続きが少しラクになっています。

2. 業務改善助成金
最低賃金を引き上げると同時に、業務効率化のための設備投資を行った会社に支給される助成金です。

- 助成上限:最大600万円
- 助成率:75%〜80%
- コース:30円コース、45円コース、60円コース、90円コース(賃上げ額による)
申請条件:
- 事業場の最低賃金と地域の最低賃金との差が50円以内
- 事業場の最低賃金を30円以上引き上げる
- 業務効率化につながる設備投資を行う
対象経費の例:
- POSレジシステム
- 会計・経理システム
- 工場で使う機械
- コンサルティング費用
- 人材育成・教育訓練費
物価高騰の影響を受けている事業者は、パソコンや自動車なども対象になる場合があります。

申請の流れを押さえよう
補助金や助成金を申請するには、いくつかの準備が必要です。ここでは補助金の申請を例に、基本的な流れを説明します。
ステップ1:GビズIDを取得する
多くの補助金は電子申請が必須です。電子申請には「GビズID」というアカウントが必要になります。

GビズIDには3種類ありますが、補助金申請に必要なのは「GビズIDプライム」です。
取得方法:
- 郵送申請:オンラインで情報を入力し、印鑑証明書(原本)を郵送。発行まで約1〜2週間
- オンライン申請:マイナンバーカードとスマホがあれば、最短で即日発行
注意点:GビズIDの発行には2〜3週間かかる場合があります。申請期限に間に合うよう、早めに取得しておきましょう。
詳細:マンガでわかる「GビズID」(経済産業省 中小企業庁)
ステップ2:公募要領を確認する
補助金ごとに「公募要領」という説明書があります。申請資格、対象経費、提出書類、審査基準など、すべてここに書いてあります。
面倒でも、公募要領は必ず最初から最後まで読みましょう。見落としがあると不採択になります。
ステップ3:事業計画書を作成する
補助金の審査では、事業計画書の内容が重要です。以下のポイントを押さえて作成しましょう。
- 何をするのか(具体的な事業内容)
- なぜ必要なのか(課題と解決策)
- どんな効果があるのか(売上向上、生産性向上など)
- いくらかかるのか(経費の内訳と根拠)
ステップ4:電子申請する
必要書類がそろったら、電子申請システムから申請します。補助金によっては「jGrants」というシステムを使います。
提出前に、書類の添付漏れや内容の矛盾がないか、複数人でチェックすることをおすすめします。
審査のポイントと採択率
補助金には「採択率」があります。申請しても選ばれなければお金はもらえません。
最近の採択率
| 補助金名 | 採択率(目安) |
|---|---|
| 小規模事業者持続化補助金(第17回) | 51.0% |
| IT導入補助金(2024年) | 約94〜95% |
| ものづくり補助金 | 40〜60%(加点項目による) |
採択率を上げる「加点項目」
補助金には「加点項目」というものがあります。これは、特定の条件を満たしている申請者に追加の得点を与える仕組みです。
主な加点項目の例:
- パートナーシップ構築宣言の実施
- 健康経営優良法人の認定
- 賃上げの実施(給与支給総額3〜5%アップ)
- 事業場内最低賃金の引上げ
- えるぼし認定、くるみん認定の取得
- 経営力向上計画の認定
ものづくり補助金では、加点項目が0個の場合と4個の場合で採択率に約2倍の差があるというデータもあります。可能な限り加点を取ることが、採択への近道です。
入金までの流れ
補助金は「後払い」です。先にお金がもらえるわけではありません。
基本的な流れ
- 公募・申請:事業計画書などを提出
- 審査・採択:審査を経て採択が決まる
- 交付決定:正式に補助金の交付が決定
- 事業実施:設備投資などを実施(この時点ではまだお金は入らない)
- 実績報告:何にいくら使ったかを報告
- 確定検査:提出書類の確認
- 精算払い請求:請求書を提出
- 入金
つまり、事業を行う時点では自分でお金を用意しておく必要があります。
入金までの期間
| 補助金名 | 精算払い請求後の入金目安 |
|---|---|
| 事業再構築補助金 | 約8営業日 |
| 小規模事業者持続化補助金 | 約1ヶ月 |
| ものづくり補助金 | 約1ヶ月 |
採択から最終的な入金までには、半年〜1年以上かかることも珍しくありません。資金繰りには余裕を持っておきましょう。
よくある失敗例と注意点
ここからは、申請でやりがちな失敗と、気をつけるべきポイントを紹介します。
失敗例1:書類の不備
最も多い不採択理由が「書類の不備」です。具体的には:
- 履歴事項全部証明書や納税証明書の添付漏れ
- ファイル形式の間違い(PDF指定なのにWordで提出など)
- 事業計画書と見積書の内容が一致していない
事業再構築補助金の第1回公募では、22,231件の応募のうち2,992件が書類不備で不採択になったというデータがあります。
失敗例2:事業計画書が読みにくい
内容が良くても、審査員に伝わらなければ意味がありません。
- 専門用語ばかりで分かりにくい
- 数字や根拠がない
- 文章が長すぎる
- 結局何がしたいのか分からない
第三者に読んでもらい、「これで伝わる?」と確認するのがおすすめです。
失敗例3:過大な投資計画
会社の規模に見合わない投資計画は、不採択になりやすいです。
たとえば、年商1,000万円の会社が1,000万円の設備投資を計画しても、「本当に実現できるの?」と思われてしまいます。
失敗例4:期限に間に合わない
補助金の申請期限は厳密です。1分でも遅れたらアウト。
また、GビズIDの取得に時間がかかって申請できなかった…というケースも。準備は早めに始めましょう。
詳細:補助金が不採択となる10の理由(RESUS社会保険労務士事務所)
不正受給のペナルティ
最後に、不正受給についても触れておきます。
補助金や助成金を不正に受け取った場合、以下のペナルティがあります。
主なペナルティ
- 全額返還+加算金:受け取った金額に加え、年10.95%の加算金と、受給額の2割相当の金額も納付
- 受給停止:不正発覚から5年間、雇用関係助成金はすべて受給できなくなる
- 企業名の公表:取消額が100万円以上の場合、事業主名などが公表される
- 刑事罰:詐欺罪(最大10年の懲役)や補助金適正化法違反(5年以下の懲役または100万円以下の罰金)
「うっかり」の場合でも、正しく返還手続きをしないとペナルティの対象になります。書類の内容は正確に、嘘偽りなく作成しましょう。
まとめ
補助金と助成金の違いを整理すると、こうなります。
- 補助金:経済産業省系、競争審査あり、高額も可能、募集期間が限定的
- 助成金:厚生労働省系、条件を満たせば受給可能、通年募集が多い
どちらも「後払い」なので、事業実施時点では自分で資金を用意する必要があることを忘れずに。
申請の際は、公募要領をしっかり読み、書類の不備がないかチェックし、加点項目を意識して準備を進めましょう。
最新の公募情報は、以下の公式サイトで確認できます。

出典一覧
- 助成金と補助金の違いをわかりやすく解説(日本中小企業金融サポート機構)
- ミラサポplus(経済産業省 中小企業庁)
- R7年度 小規模事業者・中小企業向け補助金スケジュール(中小機構)
- 2025年 補助金まとめ(補助金ポータル)
- 補助金の公募・採択(中小企業庁)
- ものづくり補助事業公式ホームページ
- IT導入補助金2025
- 中小企業省力化投資補助金
- 中小企業新事業進出補助金(創業手帳)
- キャリアアップ助成金(厚生労働省)
- 業務改善助成金(厚生労働省)
- 補助金申請に必要なGビズIDとは?(みんなの補助金コンシェルジュ)
- マンガでわかる「GビズID」(経済産業省 中小企業庁)
- 補助金の加点措置を活用|採択率を上げる秘訣(グロースコンパス)
- 小規模事業者持続化補助金の採択率まとめ(補助金ポータル)
- 補助金申請から入金まで!全体スケジュール(MSコンパス)
- 事業再構築補助金の入金タイミング(Planbase)
- 補助金が不採択となる10の理由(RESUS社会保険労務士事務所)
- 補助金の不正受給に関する事例と罰則(補助金ガイド)
- 雇用関係助成金の不正受給について(厚生労働省)
- 2026年(令和8年)の補助金・助成金まとめ(補助金の窓口)
- 中小企業向け主な補助金9種類(エフアンドエム)